仮定法の「法」とは...??
こんにちは!ちゃんみむです!
まずは、遅ればせながら、明けましておめでとうございます!昨年の末にスタートしたこのブログ、今年も言葉の不思議をたくさん解き明かしていければと思いますので、ご期待ください!
さて、新年一発目の今回は、「仮定法」の「法」という言葉についてお話ししたいと思います。
手前味噌ですが、ちゃんみむが学生だった頃はこの「仮定法」については高校に入ってから勉強したのですが、今は中学でも普通にやるらしいですね... 学習指導要領という、文科省が出している教師のマニュアル的なものが変わったことがきっかけなのだろうと思うのですが、驚きです...
さて、仮定法というと、仮定法過去とか、仮定法過去完了、それから、仮定法現在なんてものまであります。どれも名前からしてややこしくて、理解しづらいですよね...
「仮定」の部分はさておき、「法」ってなんでしょう。law ...? rule...? どれも違います。
実は 「法」 は言語学の用語で、英語では mood と呼ばれます。明解言語学辞典 (齋藤ら 2017) には、この定義について、
現実、非現実の意味的区別を、形態統語的に動詞の屈折などに義務的に反映させる文法範疇
と書いてありますが、うーん、やっぱり難しい。そして、僕が大学院生の時に、英語史の授業でこのタームを習った時には、
命題に対する心的態度
と言われたのですが、これもやっぱりちょっと難しい笑
では、実際の例を考えてみることにしましょう。仮定法というと、なんとなく if を使った表現だ!と考える方が多いような印象を受けますが、実はそれは誤解で、if を使っていても、if 節の中が現在形になっているものは「直説法」と呼びます。では、直説法と仮定法とで比較を行っていきます。
(1) a. If you are a student, you will get a 50% discount for what you buy.
学生さんは、購入品を 50% 割引でお求めいただけます。
b. If you were a student, you would get a 50% discount for what you buy.
もしあなたが学生さんだったら、50% off で買っていただけるんですけどね...
a. は、不特定多数に対してのアナウンスで、「学生に限ってではありますが、割引もありますよ」というふうに、「条件」をつけて、その条件下で起こることをその後に述べています。
一方で b. の場合は、特定個人に対して「学生だったら割引できたけど、あなたは学生じゃないから...」と言うふうに、遠回しに「割引できない」ことを伝えています。先述の通り、仮定法は「反実仮想」を表すので、「実際にはそうではないけれども...」ということを if に続けて持ってくるのですね。
もう少し端的にいうと、
a. は「学生に対して」の発話
b. は「学生ではない人に対して」の発話
なのです。
どちらも、主語が you, 補語が a student, そして肯定文なのに、動詞の「時制」が過去か現在かだけで、意味が真逆になってしまうのです。
ただ、「意味が真逆になる」と覚えてしまうと、余計にわけがわからなくなると思うので、こう考えてみてください。
学生に対して、「学生なら...」といえば、それは「事実」を述べているわけですが、学生でない人に対して「学生だったら...」といったらそれは「現実離れ」したことを述べていることになります。
そして、時制を「現在」から「過去」に変えるということは... 時間軸を... 「ズラす」わけですよね。「現在」から離れるということは、「現実, 現在」から「離れる」ということ。その「現実」からの距離を、「時制」を使って表すのが、「法」で、「ピッタリ現実」のことを話すのが「直説法」、「現実と異なること」を話すのが「仮定法」なのです。
この感覚で行けば、仮定法「過去完了」も攻略できます。
a. は、例えばあなたが学校に遅刻したとして「お腹がすごく痛かった」と理由を伝えた後に先生から言われたことを想定しています。
b. では、同じく遅刻をして電車を逃してしまった... と伝えて謝っている状況を想定しています。
(2) a. If you had a severe stomach ache, why didn’t you go to see a doctor?
b. If I had caught a train earlier, I would not have been late for school.
a. 「お腹が痛かった」も、「早い電車に乗った」も、過去のことですが、
前者では過去形が、後者では過去完了形が使われています。
a. は過去のことを表すために過去形を使っているのだから、直説法を使っていることがわかりますね。
その上で「お腹が痛かったなら、病院に行けばいいのに...」と事実ベースの話をしています。
b. では、過去のことを表すために過去完了形を使っています。
過去完了は、本来「過去」よりさらに「過去」のこと (学校の先生にはおそらく「大過去」などと習ったと思いますが...) をあらわすために使われます。
過去の時点より、前に軸をずらしているわけですから、「仮定法」で「事実ではない」ことを表していることがわかりますね!実際、この人は「1本早い電車に乗らなかった」から遅刻したわけですから、仮定法を使うべき場面ですよね。
では、次回は仮定法「現在」についてお話ししていきますので、乞うご期待!